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声を後ろに回す?

私より少し早い時期に音大を卒業して、今再び声楽を習いたいと通ってくださる方とのレッスンです。

昔に比べて高い音が出せなくなり、もっと高い音が楽に出せるようになりたいとの希望でした。

先ずは、頭と首の関係(首の始まりの場所や頭がその上で自由に動くことが出来る,等)についてお話した後、歌ってもらいました。

私には、高音を出すときに胸から肩のあたりを後ろに引いているように見えました。

ご本人は認識されていなかったのですが、これは私にも経験のあることだったので

「ひょっとしたら、昔、高い声を出すときに先生から『もっと声を後ろに回して』っていわれたことないですか?」と聞いてみました。

彼女は少しびっくりなさって、そういえば言われたことがある、とのことでした。

声を後ろに回す、息を後ろに回す、ってどういうことでしょうか?

喉を開けて、笑った顔で、おでこに声を当てて、等々 不思議な言い回しが声楽界ではよく使われています。

皆さんも聞いたことありませんか?

彼女は、うん十年前に先生から言われたことはあまり覚えていませんでしたが、体は覚えていて、高音を出すときは忠実にかつての動きを再現していたのです。

先生は生徒に分かり易いように、よくイメージを使って教えるという事をします。

音楽的なイメージはそれこそ音楽の肝というか、一番大事なといっても過言ではないものですが、事、身体の使い方になったらそうはいかないことが多々あります。

この先生(私の先生も)の言わんとしたかったことは、「身体の後ろ部分も意識して!」だったかもしれないし、「背中を縮めず長く使ってみて!」

だったかもしれません。

そして、多分その言い回しは自分や多くの生徒に有効な言葉だったのかもしれませんね。

それが役に立って歌った時に、同時にやっていた胸や肩を後ろに引く、ということだけを身体は今もやってくれて、そして、それは今必要な動きでないかもしれません。

試しに、もう一度首の上で頭が自由に動けて、取りあえず声を出すには高い音も低い音も、息がほぼ真っ直ぐに上に行けば出るって思って歌ってみて!って歌ってもらいました。

「あら、楽ちん」ていう感想を貰いました。

今までに有効だったけど、ちょっとうまくいかなくなった時は、何かやることを増やすよりも、取りあえず最低限必要なことだけをやってみて、後から加えていく方が早いかも知れませんね。

声を後ろに回すより、急がば回れ です。

おあとがよろしいようで。